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投稿日: 2025年5月29日

更新日: 2025年6月1日

GX-ETS第2フェーズとは?第1フェーズとの違いをわかりやすく解説

📌 この記事でわかること

  • 排出量取引制度の全体像
  • 第2フェーズと第1フェーズの違いとそれぞれの概要
  • プレッジ&レビュー方式とトップダウン型の限界
  • よくある質問(第2フェーズの償却期限はいつから?等)
  • GXダッシュボードの概要
GX-ETS第2フェーズとは

1. GX-ETSとは?|日本の排出量取引制度の全体像

GX-ETS(Green Transformation – Emissions Trading System)は、日本政府が企業向けに導入した排出量取引制度です。GXリーグ第1フェーズに参加する企業は、自主的に削減目標(プレッジ)を掲げ、その進捗状況についてレビューを受けます。削減量に応じて、排出枠の売買やカーボンクレジットの活用が可能です。制度は段階的に進化しており、2026年以降には法的拘束力を伴う第2フェーズへの移行が予定されています。なお、読み方は「ジーエックスイーティーエス」です。

💡2025年5月28日、改正グリーントランスフォーメーション(GX)推進法が参院本会議で可決・成立しました。鉄鋼や自動車など300〜400社が対象の見込みです。

制度の位置づけ

  • 国のNDC(国別削減目標)達成への貢献
  • GXリーグ参画企業が“見える化された排出削減行動”を共有・評価し合う場

フェーズ

GX-ETSは、パイロット期間(≒テスト期間)である第1フェーズと、一部の企業は実質義務化される第2フェーズに分かれています。

  • 第1フェーズ:2023年年度~2025年年度
  • 第2フェーズ:2026年年度~

そもそも排出量取引制度とは

温室効果ガス(GHG)の排出総量に上限(キャップ)を定め、その枠内で排出枠(排出量)を企業間で売買できるようにする仕組みです。主に カーボンプライシング(炭素に価格をつける政策) の一種として、温室効果ガスの削減を経済的に効率よく達成することを目的としています。

2. 第1フェーズ(2023年度~2025年度)の概要

GX-ETS第1フェーズは、以下の4つのステップで構成されます:

ステップ内容
① プレッジ削減目標(2025年度・2030年度・第1フェーズの排出削減量総計)を提出
② 排出量算定・報告Scope1・2排出量の算定と第三者検証。
③ 取引実施第1フェーズの排出削減量総計の目標を上回る場合、超過削減枠や適格カーボン・クレジットの調達又は未達理由を説明
④ レビュー・開示GXダッシュボード上で公開、定期レビュー

【用語解説】プレッジ&レビュー方式とは?📒

プレッジ&レビュー方式とは、企業や国が自主的に温室効果ガスの削減目標(プレッジ)を立て、その進捗や実績を定期的に報告・評価(レビュー)する仕組みです。強制ではなく、自律的な行動と透明性に基づく脱炭素の促進を狙います。

※「プレッジ(pledge)」は、英語の単語で、名詞として「誓約、約束、公約」、動詞として「誓う、約束する、保証する」といった意味があります。

背景:トップダウン型の限界

1997年の京都議定書では、先進国に対して法的拘束力のある排出削減義務を定めましたが、

  • 米国などの主要排出国が離脱・不参加
  • 発展途上国に削減義務が課されず、公平性への批判
  • 一律の義務では各国の事情に対応できない

といった問題が顕在化し、「全世界共通での実効性ある枠組み」は機能しませんでした。

これを受けて、2015年のパリ協定では発想を転換。

各国が自主的に国別削減目標(NDC)を提出し、定期的にレビューを受けるプレッジ&レビュー方式が正式に導入されました。

メリット説明
合意形成が容易各国が自分で目標を決めるので、広範な参加が可能(途上国も含む)
柔軟性と透明性目標は国の事情に応じて設定、レビューで外部評価を通じて信頼性を確保
進化的な強化数年ごとに目標を見直すことで、徐々に削減レベルを引き上げられる

この「プレッジ&レビュー」は今や、国連レベルの気候ガバナンスの中核的アプローチとなっています。企業の自主性を尊重しつつ、制度運用の実証やデータ収集を行い、将来的な制度設計の基盤を築くことを目的にGX-ETSにも取り入れられました。

3. 第2フェーズ(2026年度〜)の概要

しかし、第1フェーズのGX-ETSは「自主的な取り組み」を重視したものの、未達成に対する制裁もないため実効性や公平性に課題が多く、十分に機能していないというのが実態です。その結果、制度への信頼性や市場機能を高めるため、第2フェーズでは法的拘束力を導入する方向に舵が切られる予定です。

制度の対象者

  • CO2の直接排出量が2023~2025年度までの3カ年平均で10万トン以上の法人(単体)
  • 制度の対象事業者数は300~400社程度、カバー率は我が国における温室効果ガス排出量の60%近くとなる見込み

算定・報告及び排出枠償却に係る手続の全体像

  1. 制度対象事業者は自らのCO2の直接排出量を算定
    • 排出量の算定ルールの詳細については、省エネ法や温対法SHK制度等の関連制度における考え方を基礎として定める予定
  2. 第三者認証を受ける(=”正しく排出量を算定しましたよ”という第三者からの認証)
  3. 政府に”排出枠”の割当申請を行う
  4. 政府から無償で”排出枠”の割り当てを受ける(割り当て=企業が受け取ること)
  5. 当該年度のCO2排出量を算定、第三者による検証を受けた後、償却すべき排出枠の量を確定
  6. 過不足分について市場取引

✅ 例えば、政府から100の排出枠(=排出していい量)を受け取り、当該年度に110排出していたら、10超過していることになります。この分を、①他社の余剰排出枠、もしくは②適格カーボンクレジットを調達して償却する必要があります。
逆に、当該年度に90の排出量であったら、10を余剰枠として他社に売却し、利益を得ることも可能です。

💡排出枠とは?カーボンクレジットとの違いをわかりやすく解説

活用可能なカーボンクレジット

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排出枠の割当量

排出枠の無償割当量はどのくらいもらえるのか?が最も気になるところかと思います。

結論から言うと、2025年5月時点ではまだルールは確定していません。

下記の通り、ベンチマーク方式やグランドファザリング方式を組み合わせながら業界ごとの業種特性を踏まえて検討していく予定です。

  • 割当量については、特に業種特性を考慮する必要性の高いエネルギー多消費分野等を中心に、業種別のベンチマークに基づいて算定を行うこととする。
  • そのうえで、ベンチマークの策定が困難な分野については、グランドファザリングによる割当を行う。
  • なお、ベンチマーク対象業種や削減水準等の詳細については、有識者や産業界の意見も踏まえつつ、関係省庁とも連携して今後検討。

ベンチマーク方式・グランドファザリング方式とは

ペナルティ

償却期限までに、排出実績に相当する排出枠を償却できなかった場合は、その未達分に応じて、「未償却相当負担金」(仮称)を支払わなければならないこととする予定です。これは第1フェーズでは見られなかった罰則規定になります。

下図数式における「排出枠の上限価格(円/t)」や「調達コスト相当の算定率」の詳細は2025年5月時点では未だ未定です。

4. GXダッシュボードとは?|透明性と信頼性のインフラ

GXダッシュボードは、企業ごとの目標量、削減量実績、適格クレジット使用状況などを公表する開示プラットフォーム」で、インターネット上に公開されており誰でも閲覧可能です。

▼経済産業省『GXリーグ公式Webサイトに「GXダッシュボード」を開設し、参画企業ごとの排出削減目標等を公開しました』

▼GXリーグ『GXダッシュボードとは』

業種や企業名で検索可能になっています。

ちなみにエクスロードでは、GHG排出量・削減目標・カーボンクレジット無効化量・削減貢献量を企業・業種ごとに横断比較できるダッシュボード機能を搭載しています。Scopeごとの切り替えやcsvダウンロード機能も可能です。

💡【GHG排出量・削減目標・カーボンクレジット無効化量・削減貢献量】企業・業種ごとに横断比較できるダッシュボード機能をリリース!

5. よくある質問(FAQ)

A:第1フェーズでは自主的な取り組みでしたが、第2フェーズでは「CO2の直接排出量が2023~2025年度までの3カ年平均で10万トン以上の法人(単体)」には義務化が予定されています。

Q:GX-ETS第2フェーズで使えるカーボンクレジットは?

A:J-クレジット、JCMクレジットが適格クレジットとして使用可能です。

Q:GX-ETS第2フェーズの償却期限は?

💡GX-ETS第2フェーズにどう備える?283社調査で見えた3つの対応論点

GX-ETSはいよいよ第2フェーズ(2026年度〜)に向けて制度の本格化が目前に迫っています。
特に義務化の対象となる企業にとっては、対応方針の策定と社内準備が急務かと思われます。
今後も制度設計の具体化が進む中で、しっかり情報をキャッチアップして準備していきましょう。

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著者・監修者情報

  • 著者

    exroad | エクスロード編集部

    exroad | エクスロードは、GXリーグ参画企業を中心とするカーボンプライシング対応企業に向け、制度・市場・戦略に関する信頼性の高い情報を提供するB2Bプラットフォームです。

    AIによる情報整理と、制度設計・価格動向に関する高精度な定量・定性分析を掛け合わせ、企業のサステナビリティ・経営企画部門の戦略設計を支援しています。

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  • 監修者

    株式会社exroad 代表取締役CEO 木村圭佑

    三菱商事にてカーボンクレジットやEV、リースの事業開発に従事。2018‐2020年には在英国子会社に経営企画/事業開発担当取締役として駐在。2022年、カーボンクレジット・排出量取引制度オールインワン情報サービスを提供するexroadを創業。
    ・Harvard Business School PLDA
    ・早稲田大学大学院経営管理研究科卒(MBA・経営学修士)

    • ガスエネルギー新聞』にて排出量取引制度およびカーボンクレジットに関する連載執筆(2024年10月〜)

    • 国際排出量取引協会(The International Emissions Trading Association, IETA)主催『ASIA CLIMATE SUMMIT 2023』に経済産業省、三菱UFJ銀行、東京大学FoundXと共に登壇

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