• ホーム
  • コラム
  • CDR(炭素除去)クレジット最新動向|市場・価格・制度を徹底解説

投稿日: 2025年9月19日

更新日: 2025年9月19日

CDR(炭素除去)クレジット最新動向|市場・価格・制度を徹底解説

1. CDRの定義

CDR(Carbon Dioxide Removal)は、 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の定義では、“人為的な活動によって大気中の二酸化炭素(CO2)を取り除き、それを地質的、陸域的、海洋的な貯留庫または製品中に恒久的に貯蔵すること“とされています。
その他、“GGR(Greenhouse Gas Removal)”や、日本語では“炭素除去”などの表現が使用されていますが、基本的にはほぼ同じ意味を指します。”NETs(Negative Emission Technologies)”はより技術に焦点を当てた言葉です。(文脈によってはほぼ同義で使われます)

2. CDRの分類

CDRは大きく、「自然プロセスを人為的に加速させる手法」と「工学的プロセス」に分けられます。前者は、植林や海洋のCO2吸収を促進する技術、風化促進など。後者はDACCSとBECCSを指します。

💡ちなみに、CCS/CCU は主に工場や発電所などの排ガスからCO2を捕集し、地中に貯留したり製品に利用する技術であり、大気中のCO2濃度そのものを直接下げるものではないため、CDRには分類されません(下右図参照)。

※長期的に炭素を固定する(例:建材に埋め込むなど)場合はCDRといえるケースもあり。

3. CDRクレジットの認証機関

CDRクレジットは、Verra(VCS)やGold Standard、American Carbon Registry(ACR)など多くの認証機関において方法論が確立されています。ここではCDRに特化した代表的な認証機関であるPuro.earthとIsometricをご紹介します。

Puro.earth(ピューロ・アース)

2017年に活動を開始した、フィンランドに拠点を置く世界で初めて炭素除去に特化したカーボンクレジット認証機関。独自規格である「Puro Standard」の基準を満たしたプロジェクトにCO2 removal certificates (CORCs)を発行しています(1CORCs=1t-CO2e) 。2021年6月にNasdaqに買収され、市場にてCORC Index Family(CORC価格指数)を運用。 また、2022年にはシンガポールのカーボンクレジット取引所であるClimate Impact Xとのパートナーシップを発表しています。2025年8月12日時点で発行量は1,164,418トン、無効化量は662,973トン。

Isometric(アイソメトリック)

2022年に設立した、ロンドンとニューヨークを拠点とする炭素除去専門のカーボンクレジット認証機関。「科学的な厳密さ」「検証可能性・透明性」「利益相反を防ぐインセンティブ設計」「迅速な検証」の4原則に基づくクレジット発行体制を敷いています。また、300人以上の気候科学者と業界の専門家からなる「Science Network」を構築し、プロトコルの見直しと炭素除去科学の推進を図っています。
2024年3月にはICROAから、同年12月にはICVCMとCORSIAから認証を受けています。
2025年8月12日時点で発行量は27,531トン、無効化量は8,955トン。

💡Puro.earth・IsometricにどのようなCDRクレジットがあるのか見てみたい方は以下リンクをご参照ください。

炭素除去レジストリPuro.earthを新規追加 カーボンクレジットデータベースを拡充
✅炭素除去レジストリIsometricを新規追加 カーボンクレジットデータベースを拡充

4.CDR購入量(世界全体)

世界的なCDRデータポータル「CDR.fyi」によれば、世界全体での2024年のCDR総購入量は約800万トンでした。そしてこの内、Microsoftが単独で510万トン(全体の64%)を購入しています。

ちなみに、2023年もMicrosoft単独で320万トン(全体の70%)を購入し、市場をけん引しています。
CDR市場としては、Microsoftを除いた場合でも、2023年に130万トン、2024年には290万トンと、220%の市場成長を遂げています。

🔎さらに詳しくCDR市場全体の企業の購入・供給動向を知りたい方は以下レポートをご参照ください。

\ 世界的なCDRデータポータル「CDR.fyi」後援・協力 /

所要時間30秒・電話番号入力不要

5.CDRクレジットの価格予測(2030年時点)

2030年時点の、主要なCDR方法論の価格予測は下図の通り20,000円~70,000円超まで大きな開きがあります。バイオ炭が最も安く20,000円代前半、DAC・DACCSが最も高く最低でも50,000円超と予測されています。

💡ボランタリークレジットやJクレジットの最新価格情報はこちら

6.CDRに関連する規制動向(国内)

地球温暖化対策計画(2025改定)

DACCSの方法論整備、CO2吸収型コンクリートのクレジット化、公共調達でのCDR活用拡大、J‑クレジット活性化、JクレジットのCORSIAでの需要拡大を明記しています。

GX2040ビジョン(2025年2月)

「地方創生につながるCDR」として、CDRの取組は地域の自然状況や既存産業を基に、新たな産業の創出の可能性があると明記しています。また、今後、研究開発のみならず、地方公共団体と国、企業が連携し、新たな産業の創出につなげていくために必要な政策を検討するとしています。

7.CDRに関連する規制動向(海外)

欧州 CRCF(Carbon Removals and Carbon Farming Regulation:炭素除去・カーボンファーミング規則)

2024年11月にEU理事会に承認された、欧州全域における炭素除去とカーボンファーミング(炭素農業)の信頼性ある認証を確立し、グリーンウォッシュの抑制と投資促進を狙う制度です。EU全域で共通の認証基準を設け、方法論の策定やレジストリも整備していく予定です(つまり、Jクレジット制度のような政府主導のクレジット認証制度)。

EU-ETS改訂と炭素除去

欧州委員会では2025年7月8日締め切りでEU-ETS改訂に関する公開コンサルテーションを実施。
2025年5月にはEU-ETSと英国ETSの連携も両政府から発表されており、英国ETSでは既に炭素除去クレジットの活用方針が発表されていることを鑑みると、EU-ETSにおいても同様の進展があると考えられます。

\ CDR関連の最新規制動向を含めた業界トピックスを毎週お届け /

CDR市場は今まさに大きな変化の渦中にあります。国際的な規制の整備、企業による新しい取り組み、技術や価格の動向――これらは数か月単位で姿を変え、事業戦略や投資判断に直結していきます。断片的な情報ではなく、体系的に理解することこそが、自社にとっての機会を見極め、リスクを回避し、競争優位を築くための鍵となります。

そこで、世界的に権威のあるCDRデータポータル「CDR.fyi」と共同で作成した『CDR市場動向レポート2025』をご用意しました。最新の制度・市場・企業動向を整理し、戦略立案にすぐ役立てられる内容になっています。ぜひあわせてご覧いただき、貴社の取り組みにお役立てください。

\ 全85ページ・すべて日本語で解説 /

  • Facebook
  • X
  • LinkedIn
  • コピーしました

著者・監修者情報

  • 著者

    exroad | エクスロード編集部

    exroad | エクスロードは、GXリーグ参画企業を中心とするカーボンプライシング対応企業に向け、制度・市場・戦略に関する信頼性の高い情報を提供するB2Bプラットフォームです。

    AIによる情報整理と、制度設計・価格動向に関する高精度な定量・定性分析を掛け合わせ、企業のサステナビリティ・経営企画部門の戦略設計を支援しています。

    X(Twitter)
    LinkedIn

  • 監修者

    株式会社exroad 代表取締役CEO 木村圭佑

    三菱商事にてカーボンクレジットやEV、リースの事業開発に従事。2018‐2020年には在英国子会社に経営企画/事業開発担当取締役として駐在。2022年、カーボンクレジット・排出量取引制度オールインワン情報サービスを提供するexroadを創業。
    ・Harvard Business School PLDA
    ・早稲田大学大学院経営管理研究科卒(MBA・経営学修士)

    • ガスエネルギー新聞』にて排出量取引制度およびカーボンクレジットに関する連載執筆(2024年10月〜)

    • 国際排出量取引協会(The International Emissions Trading Association, IETA)主催『ASIA CLIMATE SUMMIT 2023』に経済産業省、三菱UFJ銀行、東京大学FoundXと共に登壇

    LinkedIn