• ホーム
  • コラム
  • Verraとは?設立背景から2025年最新動向までわかりやすく解説

投稿日: 2025年5月26日

更新日: 2025年5月31日

Verraとは?設立背景から2025年最新動向までわかりやすく解説

📌 この記事でわかること

  • Verraとは何かと設立背景」
  • Verraが運営するVerified Carbon Standard (VCS)をはじめとする6つのプログラム
  • Verraの「プロジェクトタイプ」と「方法論」
  • Verra VCSプログラムの主要統計
  • 最新の動向(グリーンウォッシュ・CORSIA・ICVCM)
Verraとは?

1.Verraとは?

Verraは、国際カーボンクレジット市場において最も広く利用されている認証機関(非営利団体)です。2007年に設立され、本拠地はアメリカ・ワシントンD.C.にあります。

Verraの読み方は「ヴェラ」です。

日本でいう「Jクレジット制度事務局」と同様に、カーボンクレジットの認証機関として、プロジェクトの認証・検証、クレジットの発行、方法論の策定及び改定、登記簿の管理などを行っています。ボランタリークレジット市場における発行量のシェアは約7割と最大手です。

📝一般に「Verraのクレジット」と呼ばれることも多いですが、これは正確にはVerraが運営する「VCS(Verified Carbon Standard)」という認証プログラムで発行されたクレジットを指します。

2. Verra設立の背景

Verraは、京都議定書の批准を受けて2000年代初頭に急速に拡大した自主的カーボンクレジット市場(VCM:Voluntary Carbon Market)の中で、クレジットの質と透明性を高めることを目的に設立されました。当時、国際的な枠組みである京都メカニズムは存在していたものの、民間主導の自発的市場では、統一された基準や検証プロセスが不足していました。

この課題を解決するため、国際排出権取引協会(IETA)持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)などの世界的な環境団体や企業の協力のもと、「Verified Carbon Standard(VCS)」という認証プログラムが創設され、それを運営する組織としてVerraが誕生しました。現在では、VCMの中で最も広く利用されている認証プログラムとなっています。

3. Verraの取り組み

Verraは、気候変動対策や持続可能な開発を支援するために、以下の6つの主要な認証プログラムを運営しています。

1. Verified Carbon Standard (VCS)

VCSは、世界で最も広く利用されている温室効果ガス(GHG)クレジット認証プログラムであり、GHG排出削減および除去活動に資金を促すことを目的としています。VCSプロジェクトでは、GHG排出の削減または除去、生活の質の向上、自然の保護など、さまざまな活動を実施しています。これまでに、VCSプロジェクトは13億トン以上のGHG排出を削減または除去しています。

2. Climate, Community & Biodiversity (CCB) Standards

CCB Standardsは、土地利用プロジェクトが気候変動への対応、地域社会や小規模農家への利益提供、生物多様性の保全を同時に達成することを支援するための基準を定めています。プロジェクトがコベネフィット(環境的および社会的な利益)を最大化することを目的としています。一部のカーボンクレジットプロジェクトでは、このCCB認証を受けているものもあり、「CCB認証ラベルのついた高品質なカーボンクレジット」ということで需要家に一定のニーズがあります。

3. Sustainable Development Verified Impact Standard (SD VISta)

SD VIStaは、持続可能な開発目標(SDGs)に対するプロジェクトの貢献を測定、報告、検証するための基準です。このプログラムは、プロジェクトが社会的、環境的、経済的な利益をもたらすことを確認し、透明性と信頼性を提供します。

4. Plastic Waste Reduction Standard

Plastic Waste Reduction Standardは、プラスチック廃棄物の削減活動を定量化し、認証するための基準です。プラスチックの回収、リサイクル、削減プロジェクトに対して信頼性のあるクレジットを提供します。これにより、プラスチック汚染の削減と循環型経済の推進が図られます。

5. Jurisdictional and Nested REDD+ (JNR) Framework

JNRフレームワークは、REDD+(森林減少・劣化の防止活動)を国や州などの広域的なスケールで実施するためのガイドラインを定めています。REDD+が効果的に実施され、炭素クレジットの信頼性向上を目指しています。

6. Scope 3 Standard Program

Scope 3 Standard Programは、企業のバリューチェーン全体におけるGHG排出削減活動を認証するための基準です。これにより、企業はサプライチェーン全体での排出削減努力を正確に測定し、報告することが可能になります。

これらのプログラムを通じて、Verraは気候変動対策、持続可能な開発、環境保全に貢献するプロジェクトを支援しています。

6つのプログラムのうち最も代表的なのが「Verified Carbon Standard (VCS)」で、これが皆さんがよく耳にするカーボンクレジットの発行に関する認証プログラムです。

Verified Carbon Standard (VCS)

4. 「プロジェクトタイプ」と「方法論」

カーボンクレジットの発行には、プロジェクトがどの分野で実施されるかを分類する「プロジェクトタイプ」と、その具体的なGHG(温室効果ガス)削減・吸収量の算定方法やモニタリング、報告手順を定めた「方法論」の2つの枠組みがあります。

たとえば、日本のJクレジット制度では、「省エネルギー」「再生可能エネルギー」「工業プロセス」「農業」「廃棄物」「森林」の6つのプロジェクトタイプが設定され、それぞれに個別の方法論が存在します。

VerraのVCSプログラムでは、特に自然ベースのプロジェクトに注力しており、AFOLU(アフォル:Agriculture, Forestry and Other Land Use/農業・林業・その他の土地利用)分野が細分化・体系化されています。REDD+(森林減少・劣化の防止)などはこの代表例です。

VCSにおける16のプロジェクトタイプ

\ 国内外の認証機関を詳細に説明・ダウンロード所要時間30秒 /

5. Verra VCSプログラムの主要統計(2025年5月時点)

「VCU」とはVerified Carbon Unitの略称で、VCSプログラムに基づき発行されるカーボンクレジットの単位です。1 VCUは、温室効果ガス1トンの削減・除去を意味します。

指標数値説明
発行されたVCU(累計)1,314,922,286t-CO2eVerified Carbon Units(VCU)は、1トンのCO₂削減・除去を表すクレジット
廃止されたVCU(累計)818,037,302t-CO2eオフセット目的で使用され、再利用不可となったVCUの総数
登録されたVCSプロジェクト数2,461件VerraのVCSプログラムに登録されたプロジェクトの総数
利用可能なバッファの合計75,112,165t-CO2eリスク緩和のために確保された非取引可能なクレジットの総数

バッファとは、自然災害や予期せぬ出来事によってプロジェクトが想定した炭素削減効果を維持できなくなった場合に備えて、一定割合のクレジットを確保しておく仕組みです。これは、プロジェクトの信頼性を高め、市場全体の健全性を維持するためのリスク緩和策として機能します。

  • 目的:プロジェクトが森林火災や病害虫などのリスクに直面し、炭素削減効果が失われた場合に備えるため。
  • 仕組み:各プロジェクトは、発行されるクレジットの一部をバッファとしてVerraに預けます。これらのクレジットは取引不可で、必要に応じて使用されます。
  • 使用例:プロジェクトで炭素貯蔵が失われた場合、バッファからクレジットが引き出され、全体の削減効果が維持されます。
  • 利点:プロジェクトの失敗が市場全体に与える影響を最小限に抑え、投資家やステークホルダーの信頼を確保します。

このように、バッファはカーボンクレジット市場の信頼性と持続可能性を支える重要な要素となっています。

6. 最近の動向と課題

グリーンウォッシュ問題への対応

近年、カーボンクレジット市場では「グリーンウォッシュ」問題が国際的な批判を浴びており、Verraも品質向上への対応を迫られています。最近でも、プロジェクトの追加性や恒久性に関する基準を強化し、より信頼性の高いカーボンクレジット市場の構築に努めています。

💡カーボンクレジット活用におけるグリーンウォッシュとは?

CORSIAへの対応

Verified Carbon Standard(VCS)プログラムは、国際民間航空機関(ICAO)の「国際航空のためのカーボンオフセットおよび削減スキーム(CORSIA)」の第1フェーズ(2024年~2026年)において、適格な排出削減単位(EEU)を供給するプログラムとして正式に承認されています。

これにより、航空会社はCORSIAのルールにおける義務を果たすために、VCSプログラムで発行されたVerified Carbon Units(VCUs)を利用することが可能となりました。(ただし、利用可能なVCUにはいくつかの条件あり)

ICVCMへの対応

Verified Carbon Standard(VCS)プログラムは、Integrity Council for the Voluntary Carbon Market(ICVCM)が策定した「Core Carbon Principles(CCPs)」に基づく評価において、制度レベルでの適格性(CCP-Eligible)を取得ています。これは、VCSプログラムが高品質なカーボンクレジットを提供する枠組みとして、ICVCMの厳格な基準を満たしていることを示しています。

7. まとめ

Verra(ヴェラ)は、気候変動や持続可能な開発といった地球規模の課題に対して、市場ベースの解決策を通じて取り組む非営利団体であり、国際カーボンクレジット市場において最も影響力を持つ認証機関の一つです。その発行するVCUは多くの企業のカーボンオフセットに利用されており、脱炭素を進めるうえで欠かせない選択肢となっています。

\ 海外クレジット最新動向などのニュースを配信中 /

  • Facebook
  • X
  • LinkedIn
  • コピーしました

著者・監修者情報

  • 著者

    exroad | エクスロード編集部

    exroad | エクスロードは、GXリーグ参画企業を中心とするカーボンプライシング対応企業に向け、制度・市場・戦略に関する信頼性の高い情報を提供するB2Bプラットフォームです。

    AIによる情報整理と、制度設計・価格動向に関する高精度な定量・定性分析を掛け合わせ、企業のサステナビリティ・経営企画部門の戦略設計を支援しています。

    X(Twitter)
    LinkedIn

  • 監修者

    株式会社exroad 代表取締役CEO 木村圭佑

    三菱商事にてカーボンクレジットやEV、リースの事業開発に従事。2018‐2020年には在英国子会社に経営企画/事業開発担当取締役として駐在。2022年、カーボンクレジット・排出量取引制度オールインワン情報サービスを提供するexroadを創業。
    ・Harvard Business School PLDA
    ・早稲田大学大学院経営管理研究科卒(MBA・経営学修士)

    • ガスエネルギー新聞』にて排出量取引制度およびカーボンクレジットに関する連載執筆(2024年10月〜)

    • 国際排出量取引協会(The International Emissions Trading Association, IETA)主催『ASIA CLIMATE SUMMIT 2023』に経済産業省、三菱UFJ銀行、東京大学FoundXと共に登壇

    LinkedIn