CARBON JUNCTION vol.4

「地球環境問題に貢献したい」と東京ガスの門を叩いたのは、就職氷河期時代。少しでも印象に残るようにと必死だった当時の私は、皆が就活スーツに身を包む中、エンブレムが胸に付いた体育会の正装にホッケーのスティックを担いだ出で立ちで東京ガスの面接に臨んでいた。ちょうどホッケー経験者の面接官に当たり、「僕も学生時代にやってたよ」と優しく見送ってもらったことは今でも覚えている。そんな経緯で半ば強引に内定を獲得した東京ガスは、私の第一希望の会社だった。
大学時代、部活しかやってこなかった私に与えられた最初の仕事は「営業」。法人向けにガスヒートポンプで動くガス空調(GHP)を売る仕事だった。価格に厳しいお客さまが担当で、OJTで同行していた1年目は、先輩社員とお客さまの間で、電卓が行ったり来たりするのを隣でただただ見つめていた。私がやりたかった仕事って?とモヤモヤを抱えながら3年が過ぎた。
同期の中でも早い結婚と出産を経て、働き方が一変した。時短勤務で保育園のお迎えに走り、家に着いてからは第2ラウンド。左手に子供を抱きかかえ、右手ではフライパンを振る生活だった。身体はヘトヘトだったが、心は充実していた。自分のための人生が、誰かのために生きる人生に変わっていった。3人目の子供がそろそろ小学生にあがる頃、そろそろ仕事もギアアップしてみる?と上司から声を掛けてもらった。その時に出会った仕事が「カーボンクレジット」だった。
ずっとやりたかった脱炭素の仕事に
「ちょっと面白いLNGを調達したから、マーケットにあててみてよ。」「えっ?」
それが「カーボンニュートラルLNG(当時の名称)」の始まりだった。当時誰も知らない“ボランタリークレジット”とLNGを抱き合わせた新しいコンセプトのガス。「これをお客さまに提案する?」「どうやって??」私は困惑した。
案の定、営業部門からは、「国内制度に使えないの?そんなガス誰が買うの?」「会社の中での位置付けは?」「タダでばら撒けばいいんじゃない?」と冷ややかで取り付く島もない。
ボランタリークレジットの価値をどうしたらわかってもらえるか、頭を悩ませていた時に、アドバイスをくれた方がいた。「ボランタリークレジットの裏側に広がるストーリーにフォーカスを当てて、環境価値だけではない社会的な価値を伝えるべき」だと。「なるほど、SDGs価値を訴求するということか。」光が見えた気がした。方針が決まればあとは動くだけだ。得意なプロモーションで“時代の最先端を行く地球規模での環境的・社会的価値のあるガス”としてブランディングしようと決めた。ブランドコンセプト・ロゴ・ムービー・HP等を次々と準備し、当時はまだ珍しかったオンラインセミナーを開催。有識者を招き、ボランタリークレジットの価値を多方面から語ってもらった。
そうこうしているうちに、環境意識や社会貢献意識が高く、新しいモノ好きなお客さまが1社・2社・・・と関心を示し始めた。そして2021年3月、15社のお客さまとともに、多くのメディアの前で、バイヤーズアライアンス設立の記者発表会を執り行うまでに至った。制度の裏付けがないボランタリークレジットの価値を、お客さまが安心して対外的に発信できるように、第三者検証の仕組みも整えた。お客さまをグリーンウォッシュから守るために欠かせない取組だった。
気が付けば、1社から始まった取組が、業界大に拡がっていた。足掛け7年、当社のお客さまも180社、300拠点を超えるまでに至った。当時3名だったメンバーは、今や社外からも素晴らしいメンバーが加わり、14名にまで仲間が増えた。 外部環境は目まぐるしく変化し、それに呼応するように我々のメニュー数も増え、バリューチェーンに関わる業務も多岐に渡り、より事業を取り巻く環境は複雑さを増している。ただ一つ言えることは、「カーボンクレジット」は必ず、今後も、日本にとって、日本企業にとって、必要なアイテムの一つであり続けるということだ。様々な不確実性はあるが、私も今のメンバーと難しい船路の舵取りをしていき、今後も発展していくだろう「カーボンクレジット」の世界に微力ながら関わり続けたいと願っている。

“当日出社していたカーボンオフセット事業Gメンバーで写真撮影(筆者は中段右から2人目)”
東京ガスの取り組み
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東京ガスは、「カーボンオフセット都市ガス」
を現在3ラインナップご用意しております。 熱の脱炭素化にお悩みの方、是非お気軽にご相談ください。 高品質な⾃然系ボランタリークレジット、Jクレジット、 JCMの調達・開発も積極的に推進しています。 -
東京ガスカーボンオフセット都市ガスHP:https://
carbon-neutral-lng.jp/