CARBON JUNCTION vol.12
きっかけは定かでないが、幼い頃から将来の夢は「動物学者」だった。毎日のように動物図鑑を読みふけり、アフリカのどこかに生息するやたら名前の長い動物を片っ端から覚え、好きな番組はBBCの動物ドキュメンタリー。高校生になってもその熱は冷めず、日本で動物研究に強い大学の理学部を志したが、どうにも数IIIの成績が振るわない。浪人を避けたかった私は、センター試験を終えたタイミングで数学の配点が低い農学部の森林学科へと志望先を切り替えた。「森にも動物はいるはず」という素朴な動機ではあったが、ここから私の「森人生」が始まった。
コロナ禍という言葉が浸透し始めた2020年春、私は就職活動期を迎えた。動物への思いを捨てきれなかった私はテレビ局を受け、動物番組の制作に携わりたいと語ったがあえなく惨敗。やはり大学で学んだ林学を真正面から生かすべきか——そう考え直し始めた頃、丸紅が林学の経験者を対象に採用募集していることを知る。それまで総合商社という業界自体全く視野に入れていなかったが、フォレストと名のついた本部があるほど森林事業に注力し、インドネシアで東京都の約1.3倍という広大な植林地を管理していると聞き、興味を持った。ご縁あって入社し、2年目にはそのインドネシアの植林会社、MHP社に出向することになる。
MHP社で私に託された業務は、保護林区における森林再生だ。そこで耳にしたのは、スマトラゾウやスマトラトラといった希少な野生動物がその地に生息しているという事実。
野生動物に携わる職に憧れを抱きながらも、少し違うレールを歩んできた人生だったが、自分の仕事が彼らの生息地を守ることに直結していると知ったとき、不思議な巡り合わせを感じた。
高校三年のときに抱いた「森にも動物はいるはず」という思いは、あながち的外れではなかったのだろう。

“丸紅がインドネシアに保有する植林会社MHP社の森林”
日本に帰任後は、森林事業課という新しい組織で森林の環境価値に焦点を当てたカーボンクレジット創出事業の検討に携わっている。ここでも欠かせないのが、森林の担う「生物多様性保全」の機能だ。再エネや省エネ、CCUSなど多様なカーボンプロジェクトがある中で、野生動物の保護に資するという側面は、森林プロジェクトならではの重要な価値である。米国の大手企業をはじめ、単に炭素を吸収するだけでなくこうしたコベネフィットをもたらす森林クレジットに意義を見いだす動きは着実に広がっている。
この潮流が世界各地でさらに加速し、森林再生が進めば、人間活動に伴う土地開発で居場所を失った野生動物たちも、再び森へ戻ってこられるはずだ。幼い頃、テレビの向こうで見た、熱帯雨林でのんびりと暮らすオランウータンや、サバンナを駆けるチーター。その姿がこれからも地球上で見られるように——森林クレジット事業の推進を通じ、微力ながら力を尽くしていきたい。
丸紅の取り組み
丸紅では、幅広いカーボンクレジットの創出・調達・市場での流通を通じて、脱炭素社会の実現に貢献する取組みを推進しています。
・森林再生カーボンクレジットプログラムの開発について~フィリピンで初めての産学官協働~
・カーボンクレジットの品質を評価する枠組みの構築に向けた業務提携について
・令和5年度「二国間クレジット制度を利用した代替フロンの回収・破壊プロジェクト補助事業」の採択案件の決定について | 報道発表資料 | 環境省