CARBON JUNCTION vol.21
私のキャリアは職業軍人で始まった。民間企業に入ってからもその文化や考え方を変えることができず、職場文化になじむまでに相当な時間がかかった。何が言いたいかというと、これまでCarbon Junctionに寄稿した諸先輩方とはまったく異なり、現職に就くまでは気候変動に関する知識や思い入れもゼロであった。今は、海外で行われるカンファレンスで自社の取り組みを説明したりできるようになったが、初めて会う登壇者との会話でキャリアに関する話になると「interesting」と言われるがその真意は不明だ。
入社時はHSE(Health Safety Environment)ユニットという、石油企業ではお馴染みの部署にフィジカルセキュリティ専門家として配置され、危険地域へ出張する社員が出張先でも安全に仕事ができる環境を提供することが私の使命だった。
このため基準値を超えた国・地域への出張時は私(正確には担当役員)の許可が必要となる。
転機が訪れたのは2022年の秋口だ。とある社員から相談があった。後からわかったのだが、その社員は私が今所属するグループのメンバーだった。ブラジルに出張するので相談にのってほしいとの依頼だった。ブラジルは基準値以下なので許可は不要であることを伝えたところ、旅程を見てほしいと言われたため確認した。
Rio de JaneiroやSão Pauloといった定番の出張先ではなく、COP30の開催地として知られるブラジル最北の都市ベレンから直線で300キロ以上南下した場所が目的地だった。当時は理解できなかったが、目的は森林プロジェクト事業者との面談だった。
さすがにこれは確認が必要と判断し、出張者に先立ち現地調査を決定した。現地大使館の仲間に連絡し、情報収集を始めた。
ブラジルは日本の真裏にあり、とにかく遠い。そのうえ今回の目的地はアマゾン地域の内陸だったため、上陸してから安全確認をしながらの移動で2日以上かかった。目的地に着くころには舗装路もなく広大な畑が続いた。運転手は「昔このあたりは全部森だった」と言った。この国はどんどん森が破壊され、畑や牧場になっている——その言葉が印象的だった。
しばらく走ると外周にフェンスと監視カメラが定点配置された森が現れた。REDD(森林減少を防ぐことで排出削減につなげる枠組み)プロジェクトだ。不法侵入や不法伐採への備えだろうか、入り口にはセキュリティが配置され、なんだか物騒な雰囲気だった。
サイト内は地域コミュニティが森と共存していて、至極自然に見えたが、プロジェクトがなければこの人たちは今頃どうしていたんだろうと素人ながら大切さを実感した。これが私とREDDの出会いだ。
日本に戻り、出張予定者にレポートを提出した際の話だ。「これからは君のようなフィジカルに強い人間がグループに必要だ。」この一言から私の人生はセキュリティから気候変動に変わり始め、数か月後には現在のグループへ異動し、カーボンクレジットのいろはを猛勉強する日々が始まった。
まだまだ未熟ではあるが、気候変動問題や自社プロジェクトからのGHG排出を自分ごととして考えるようになり、制度の議論だけでなく、守るべき森の現場の安全や地域の暮らしまで含めて考える必要があると感じている。要するに、すっかりこの分野にハマっている。
GX-ETSも開始され、我が国もネットゼロに向け進み始めている。「好きこそ物の上手なれ」。この道のプロとなり、現場と制度をつなぐ役割を担いたい。

REDD+プロジェクトサイトビジット時
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