CARBON JUNCTION vol.18
投稿日: 2026年1月13日
株式会社セールスフォース・ジャパン
ソリューション統括本部
インダストリーアドバイザー本部長
兼 サステナビリティ ソリューション推進室長
西田一喜
【略歴】三菱商事に新卒入社。天然ガス・LNG開発の事業投資などを担当し、エネルギー安定供給に従事。その後、同社の脱炭素事業を推進するカーボンマネジメント室の設立に参加し、カーボンクレジット事業をリード。2023年、株式会社セールスフォース・ジャパンに入社し、脱炭素・サステナビリティビジネスを牽引。2025年にはインダストリーアドバイザー本部長に就任し、業界特化ソリューションの市場展開をリードしている。
私は現在、インダストリーアドバイザー本部の責任者として、お客様が抱える業界特有のビジネス課題と向き合い、”Agentic Enterprise”(人とAIエージェントが共に働くことで企業の能力・生産性を拡張する姿)への変革を支援する事をミッションに、Salesforceの業界特化ソリューションのGoToMarketをリードしています。この具体的なスコープの1つとして、サステナビリティ経営に取り組むあらゆる業界のお客様を支援するソリューション「Agentforce NetZero(Net Zero Cloud)」の市場展開を推進しています。
ITベンダーとしてお客様の脱炭素の取り組みを支援する事と並行して、Salesforceは自社の気候変動対策として2017年よりカーボンクレジット購入を継続しており、近年では、自然系・技術系の高品質クレジットの調達など、取り組みを高度化しています。炭素市場の「Buyer」として培ってきた知見を、日本の皆様に還元していくこと。それが、私と炭素市場との今の交差点です。
では、なぜ私はITの立場で炭素市場に向き合うことになったのか。その原点をお話しします。
ジャカルタで感じたジレンマ
私のキャリアの原点は、前職の三菱商事の時代に遡ります。入社から約10年間、海外の天然ガス・LNG開発事業を担当し、2015年から約5年間はインドネシア駐在を経験しました。
LNGは、脱炭素社会への移行期を支える比較的低炭素の燃料ですが、その輸出国であるインドネシアの当時の発電は石炭火力が中心でした。 ジャカルタの高層ビルからふと窓の外を眺めると、深刻な大気汚染で視界が白く霞んでいることが珍しくなく、途上国が抱えるジレンマを目の当たりにしていました。国境を超えて環境価値(脱炭素価値)を融通し合う「炭素市場」の仕組みこそが、地球規模で脱炭素を加速させる解決策になるのではないか。そう直感したのが、私がこの領域に深く関心を抱いた原体験です。
また、少し視点を変えると、私のルーツもこの道に繋がっています。京都の実家は材木屋を営んでおり、幼い頃から「木」は身近な存在でした。木が育ち、切られ、家となり、炭素を固定し続ける。理屈以前に、炭素循環の営みがDNAに刻まれていたことも、私が自然とこの分野に惹かれた理由の一つかもしれません。
現場の課題とテクノロジーへの確信
駐在から帰国後、私は三菱商事でカーボンクレジットの新規事業に携わりました。そこで脱炭素に取り組むお客様と対話をして驚いたのは、排出量データの収集・可視化やサステナビリティ情報開示などの業務負荷が高く、現場のマンパワーが逼迫していた状況です。カーボンクレジットなど、脱炭素の「攻め」の施策を計画する前に、足元のデータ統合管理や可視化・分析の業務プロセスに課題を抱えていました。この課題解決にはテクノロジーの力が不可欠だと確信し、私はSalesforceへの転身を決意しました。サステナビリティの現場へのテクノロジー導入、特にAI・AIエージェントには大きな変革の可能性を感じ、ソリューションの市場展開に取り組んでいます。
企業の「意志」が評価される脱炭素社会へ
日本でもGX-ETSが始動するなど、コンプライアンス対応としての炭素市場への関心が高まっています。これは市場活性化のための極めて重要なステップです。
しかし、私が目指したいのは、 Salesforceがそうであるように、企業のコアバリューやビジョンに基づき、自主的に脱炭素に取り組む。このような「企業の意志」あるアクションが、投資家や消費者、そして社会全体から正当に評価されるモメンタムを作っていきたい。
そのために、これからもテクノロジーの力で、企業の「足元」を支えていきたいと思います。

“向かって一番左が筆者。キャリアの原点となった、インドネシアの天然ガス開発の現場にて”
セールスフォース・ジャパンの取り組み
Salesforceは、企業のサステナビリティ経営強化を阻む