CARBON JUNCTION vol.15
リーマン・ショックが起こった時期に学部生であったこともあり、金融危機のメカニズムやその事前事後の対応策に関心が強く、2014年に財務省に入省した。
予算や財政分析、発展途上国向けの円借款など、幅広く財政・金融の分野を経験し、そろそろマーケットに関わってみたいと思った矢先、外為特会が保有する外貨資金の運用担当になった。ちょうど、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資が機関投資家の間で関心が高まっている時期で、主要国の為替当局や有識者との議論を通じて知見を深めていった。それが曲がりなりにも炭素市場と関わりを持ったきっかけである。
その後、人事院の長期在外研究員制度を利用し、2年間、米国の公共政策大学院に留学することになった。新型コロナウイルスの感染拡大が一段落し、対面授業や交流イベントが再開し始めたころだった。出願時はあまり意識しなかったが、エネルギーや環境分野にも強みがある大学院だったこともあり、関連のケース・スタディや学内で日夜行われるイベントに貪欲に参加した。SNSに苦手意識があったが、背に腹は代えられず、ビジネス交流用のLinkedInのアカウントを新たに作り、情報収集やネットワークの構築のために最大限活用した。
幅広いステークホルダーとともに、政策を推進していく醍醐味を知る。社会的課題の解決や持続的な成長に向けて、健全なサステナブルファイナンス市場の発展に貢献したい。
帰国後、2023年6月より、日本国債のIR(投資家向け広報)を担当することになった。今度は一転して発行体サイドへ。政府として、排出削減、経済成長、エネルギーの安定供給を同時に追求する、GX(グリーン・トランスフォーメーション)政策に向けて大きく舵を切っていた時期である。その中核となるのは、直ちに排出削減が困難な製造業を中心にエネルギー転換や省エネの取組を後押しする、トランジション・ファイナンスの仕組み。民間の資金供給の呼び水としてのGX経済移行債の発行が年度内に迫り、世界初のトランジション・ラベルの国債ということで、市場関係者の注目を集めていた。発行の前後で、経済産業省やフレームワークの評価機関、金融機関の担当者とともに、主に欧米の機関投資家に対してGX経済移行債のIRを行った。日本のGX政策やトランジション・ファイナンスの意義を丁寧に説いて回り、理解を求めた。投資家の問題意識は、経済や財政はもちろん、トランジション・ファイナンスの詳細なスキーム、技術の動向まで本当に幅広く、それぞれの専門に応じて協力して対応した。様々な分野の専門家と一緒に政策を進めていく醍醐味を強く感じた。

“日本国債担当の際には、国内外のセミナーや国際会議に積極的に登壇し、GX政策やトランジション・ファイナンスの取組みをアピールした”
2年間、日本国債のIR業務に携わった後、晴天の霹靂で、金融庁でサステナブルファイナンス担当となった。ASEANの金融当局や民間金融機関らと、事例をベースに実務的な議論を積み上げ、アジアでのトランジション・ファイナンスを進めていく、アジアGXコンソーシアムの運営などに従事している。思ってもみないかたちで、財政・金融とともに、環境とエネルギーも新たな軸になりつつある。ありがたいことに顔なじみも増えた。サステナブルファイナンスは、経済、金融実務、法律、科学技術など切り口が多く、トレンドも目まぐるしく変わるため、勉強に勤しむ日々である。今後とも、社会的課題の解決や持続的な成長に向けて、国内外のステークホルダーと連携しながら、健全なサステナブルファイナンス市場の発展に貢献していきたい。
金融庁の取り組み
新たな産業・社会構造への転換を促し、持続可能な社会を実現する
https://www.fsa.go.jp/policy/s