Carbon Junction 私と炭素市場との交差点

CARBON JUNCTION vol.9

投稿日: 2025年10月14日

株式会社exroad | エクスロード
代表取締役COO/CMO
北原啓吾

【略歴】2010年博報堂入社。自動車メーカーのマーケティングやメディア・コンテンツビジネス、デジタルマーケティングに従事。2022年にexroadを創業。

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新卒で博報堂に入社し、自動車メーカーのスズキ株式会社を担当した。ほぼ毎日東海道新幹線に乗り、日帰りで浜松へ通う日々。ときには寝過ごして京都まで行ってしまうこともありながら、社会人としての基礎を叩き込んでいただいた。故・鈴木修さんの著書『俺は、中小企業のおやじ』は今でも私のバイブルである。(ご縁があり、2023年JAPAN MOBILITY SHOWのカーボンオフセットをお手伝いし、実子である鈴木俊宏社長とトークショーでご一緒したときは、感無量であった。)

30代半ば、キャリアに悩んでいたころ、ちょうどコロナ禍で時間ができたこともあり、ろくに勉強してこなかった自分を省みて「もう一度、基礎から鍛え直そう」と思い立った。アカデミアの力も借りようと、早稲田大学大学院経営管理研究科の門を叩く。ファイナンス、会計、経営戦略、人材・組織、オペレーションなどを体系的に学びつつ、元ボストンコンサルティンググループ日本代表・杉田浩章先生の新規事業開発の授業も履修した。私のような大企業の中堅人材が起業に挑むことで、知見と経験が新たな事業や産業に転化し、経済の新陳代謝が進む。人材の流動性が高まることで、社会全体の創造性と成長力が活性化する。そう考えていた折だったので、実践にフォーカスしたこの授業は特に楽しかった。

平日授業が終わると、終電まで起業計画を練る日々が続いた。

そしてその講義で偶然、排出権・炭素市場での挑戦に胸を高鳴らせていた当社CEO・木村(当時は三菱商事勤務)と出会う。炭素市場はまったくの門外漢であったが、彼の熱意に引き込まれ、平日授業が終わると、終電まで起業計画を練る日々が続いた。

修士論文は、マーケティング業界に長くいた経験を踏まえ、行動経済学と環境分野を掛け合わせて、「日本人の環境配慮行動を促すレバーについての考察」というテーマで執筆した(最近、この論文で事例として取り上げた米国グリーン・フィンテック企業Aspiration社のCEOが詐欺で有罪となる見込みとの報道があり、やや落ち込んだ)。授業の流れから杉田先生に師事し、ゼミ仲間には東京ガスや双日で環境分野に詳しい学友もいて、ずいぶんと助けられながら何とか書き上げた。

そして大学院の卒業とほぼ同時に、私も木村も会社を辞め、CTOの畑中も加わり、エクスロードを創業した。

GX分野は海外との情報の非対称性が大きい。英語がベースで流れも速く、しかも情報源が分散しているため、全体像をつかむのが難しい。私たちは、そうした環境下でも皆さんが情報収集に追われることなく、本質的な判断や戦略設計といった“エッセンシャルな仕事”に集中できるようにしたい。そんな思いからサービスの提供を始めた。ありがたいことに、ご利用企業も少しずつ増え、「生産性が上がった」といった声をいただけるようになってきた。

カーボンクレジットの世界は、グリーンウォッシュや品質問題など、どうしても“揺らぎ”に焦点があたりやすい。だからこそ、関わる人々の顔が見えるかたちでつながり、互いの信頼や知見を重ねながら、健全な発展を育てていくことが大切だと思う。

カーボンプライシングの市場メカニズムが正しく働き、資金が適切に循環し、日本経済の競争力強化と地球環境の改善の両輪が噛み合っていく――。そんな未来を、現実のかたちへと少しずつ近づけていきたい。

”大学院の卒業式で木村と。向かって左が筆者

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